ひょうたん島(蓬莱島)のある赤浜の岸辺で、瓦礫から工具を拾い集める船大工に出会った。大槌湾に面した岩手造船所は津波で壊滅し、流された船は陸に打ち上げられたり、海上を漂流したりしていた。船大工は、「あの船さ、おらほの方から流れたべ」と屋根の上に乗った観光船を見上げた。漁師町の復興に、船は欠かせない。「やんねばなんねえ」、船大工たちは声を合わせた。町に暮らしの明かりが灯る日を夢見て、途切れることなく復興の槌音を響かせ続けた。
今、夜空の下に街明かりが輝き、蓬莱島の灯台は海を照らす。家族や仲間を失い、悲しみや苦しみを乗り越えても、さらに困難は続いた。しかし船大工をはじめ、町の誰もが、誰かの明日を想い、支えあい、新しい町を築き上げた。写真展『造船記』は、東日本大震災から復興までの不屈の歩みをたどる船大工たちのクロニクル。
○岩手展
期 日:2023年3月4日(土)~12日(日)入場無料
会 場:大槌町文化交流センター「おしゃっち」1階
〒028-1117 岩手県上閉伊郡大槌町末広町1-15
トークイベント 「時代の記録者たち」
3月12日 午後2~4時
おしゃっち2F 会議室
あの瞬間、なぜシャッターを切ったのか?被災から新しい町ができるまで、ファインダー越しに見つめた大槌町。時代の記録者たちは何を遺し、何を伝えようとしているのか。12年の時を経て、津波被害を記録したカメラマンたちが集うトークイベントを開催。
野田雅也(写真家/写真集「造船記」)
八重樫信之さん(写真家/リメンバー大槌実行委員)
植田俊郎さん(大槌町 植田医院 院長)
佐々木慶一さん(大槌町安渡町内会会長)