ひょうたん島の弁天様

 作家・井上ひさしが愛した岩手県大槌町。代表作のテレビ人形劇「ひょっこりひょうたん島」や、小説「吉里吉里人」の舞台になりました。

 時刻を知らせる1日3回の町内放送は、「ひょっこりひょうたん島」の主題歌が、軽快なリズムで流れます。正午を知らせる放送では、曲が流れると、町民は条件反射でお弁当を開けてしまうそうです。

 「ひょうたん島」の愛称で知られる蓬莱島は、大槌湾に浮かぶ大小ふたつの大岩が連なる周囲200mの小さな島です。島には祠があり、弁財天が祀られることから、親しみを込めて「弁天様」と呼びます。

 2011年、弁天様の祠も高さ13メートルの津波に沈みましたが、安置されていた立像は奇跡的に無事でした。

 弁天様にはこんな言い伝えがあります。

 昔々、大槌の集落を津波が襲い、木彫りの弁天像の一部が浜に流れ着いたそうです。当時の被災した人たちは、津波が運んできた海の守り神として蓬莱島に祀ることにしました。以来、大槌を守る弁天様として大切にされてきました。

 現在の弁天様は江戸時代に文楽人形の技法で作られていますが、今回の津波で一部損傷した弁天様を修復した際、白化粧したお顔の内部に、昔々に流れ着いた木彫りのお顔が入っていることが分かりました。

 ひょうたん島の弁天様は、時を越えて、津波の記憶を未来に伝え続ける存在だったのです。

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