私は、東日本大震災の翌日から福島で取材をはじめ、福島第一原発の1号機や3号機が爆発するなかで、三陸沿岸部の被災地も撮影しながら、車で北上していました。
大槌に着いたのは3月17日、津波火災の焼け跡にはまだ煙が立ち上っていました。民宿の屋根に乗り上げた遊覧船「はまゆり」を撮影しようと、山を越えて大槌の赤浜へ辿りつきました。
その「はまゆり」を撮影した次のカットで、偶然に撮影したのが「今日の1枚」です。
頭上を自衛隊ヘリが通過したので、倒壊した建物を入れてシャッターを切ったに過ぎません。写真単体では、特別に何かを強く訴えるものではないため、セレクトされた写真フォルダーにも入っていませんでした。
しかし数年後、震災当時の写真を掘り起こしている時に、この建物こそが被災した「岩手造船所」だということに気づきました。のちに11年に渡って撮影することになる「岩手造船所」の、はじまりの1枚だったのです。
船大工たちがこの瓦礫の山を自らの手で片付けることから、「造船記」は始まります。
この瓦礫の中から、再建につながるたくさんの宝物が見つかるのです….。
つづく